ロイヤルバレエ団を代表するプリンシパルダンサー、ナタリア・オシポワとスティーブン・マックレー。
今は二人とも円熟期に入ってきて、ドラマティックで深みのある踊りへの深化中ですよね。
(マックレー、ケガから完全復活しますように・・)
重ねてきた経験で観客を惹き込むバレエは大好きですが、若さが爆発したようなテクニックでぐいぐいもっていかれる舞台も楽しいものです。
また、ナチュラルで役柄そのもののロイヤルダンサーたち。ラ・フィユ・マル・ガルデの世界にあっという間に引き込んでくれます。
世界トップクラスのテクニックを誇る二人が織りなす「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」をご紹介します。
幸福感溢れる作品をオシポワとマックレーが好演
ロイヤルシネマで放映されていたのを見たのがきっかけです。印象が強すぎてDVDを購入しました。
作品の特徴
- 振り付けは、フレデリック- アシュトン
- 主役二人の瑞々しさ溢れるテクニック満載の踊りが楽しめる
- コミカルで幸福感溢れる結末で笑顔になれるバレエ
- 普通の(一般的な)愛をテーマにした最初のバレエとも言われている
注目してほしいのは「ふつうの女の子」が見事に表現されている振付!
「ふつうの恋」をバレエを通して見事に表現しています。白鳥の湖や眠りの森の美女といったプティパのような優雅な動きのバレエではなく、随所に「ふつうの女の子」を表現する動きが散りばめられているんです。
おしりで階段を滑り落ちて着たり、コーラスとほっぺをすりすりしたり・・
アシュトンの才能に唸るしかありませんでした。
このDVDをおすすめする理由
- なんてことない田舎の日常を、ロイヤルバレエ団が見事な演技力で物語に引きむ
- テクニック全盛期ともいえるオシポワとマックレーが舞台上で弾けた!
- オシポワはリーズそのもの。コミカルだったり、恋する少女だったり、表情を見ているだけでも楽しい♪
ラ・フィユ・マル・ガルデの概要
概要
イギリスの田舎を舞台にした若者たちの恋事情。ハッピーエンド♡
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:エルナン・エロール
編曲:ジョン・ランチベリー
初演:1960年
時間:全2幕 約1:50
主な配役
リーズ:ナタリヤ・オシポワ
コーラス:スティーブン・マックレー
シモーヌ(リーズの母):フィリップ・モーズリー
トーマス(ブドウ園のオーナー):クリストファー・サウンダー
アラン(トーマスの息子):ポール・カイ
今だから探してみたいダンサー
現プリンシパルたち
最近プリンシパルに昇格したダンサーたちがコールドバレエなどにいます
- 金子扶生さん リーズのお友達
- フランチェスカ・ヘイワード にわとり!
- マヤラ・マグリ リーズのお友達
日本人ダンサー
アクリ瑠嘉さん
農夫。笛を持ったソロパートで活躍
余談:アクリさん、来日公演の出待ちの写真お願いに「僕なんて・・」と謙遜していたのが印象的でした。いやいや、すごかったですよ!?
作品のバックグラウンド
- もともとあった古い作品で、アシュトンは改訂版を制作
- 創作時、周囲から疑問の声があがったものの、初演から大成功を納めた作品
- シンデレラやシルヴィア、オンディーヌは、マーゴット- フォンティーンを念頭に置いて制作。しかし、ケガのためこの作品は、モイラシアラーが初演を務めた
- 木靴の踊りはアシュトンのオリジナル
- アランが傘をもって強風に飛ばされそうになるシーンは、昔のままだそう
あらすじ
リーズが主役なのかシモーヌが主役なのか 笑 とにかくキャラがすごく立つ作品です。
登場人物
リーズ:農家の女の子で、コーラスと恋仲
コーラス:貧しい農民の青年でリーズの恋人
シモーヌ(リーズの母):農家の未亡人。裕福な家に娘を嫁がせたい
トーマス(ブドウ園のオーナー):農園主で息子のアランにいい嫁をと画策
アラン(トーマスの息子):農園主の息子で頭が弱い。赤い傘が大好き。
第一幕
舞台はイギリスの田舎の村。
未亡人シモーヌは、ひとり娘のリーズを裕福な家に嫁がせたいと考えていました。
けど、リーズには貧しい農民のコーラスという恋人がいて、シモーヌの反対を知りながらも二人の仲は順調そのもの。
ある日、お金持ちのブドウ農園主のトーマスが自分の息子とリーズを結婚させたいとシモーヌに申し出ます。トーマスの息子アランは少し頭が弱く、しっかりとした嫁を見つけたいと考えてのことでした。
シモーヌはもちろん乗り気。リーズにアランと結婚するように言いますが、コーラスという恋人がいるリーズはイエスとは言いません。
トーマスとシモーヌは、リーズとアランをピクニックに連れていき、二人の仲を深めてもらおうと画策します。そうはさせないと、コーラスもこっそりピクニックへ・・
コーラスは友人の農夫たちと結託し、リーズとコーラスはアランをどこかへやり、ふたりの時間を楽しみます。一方のシモーヌは、周りにおだてられて「木靴の踊り」を披露します。
やがて天気が一変、嵐がやってきました。
一行は急いで帰宅の途へ・・ ここで一幕の終了です。
第二幕
家に戻ったシモーヌは、トーマスと話し合って結婚を決めてしまい、結婚の手続きを踏もう家に着いたシモーヌとリーズ。
シモーヌはアランとの結婚を決め、手続きを始めようとします。もちろんリーズは反発します。そんなリーズをシモーヌは、閉じ込めてしまいカギをしっかりと自分で保管・・
リーズはカギを取り出し逃げようと試みますが、上手くいかず。。
そんな中、農夫たちが収穫物を届けにきました。彼らはリーズとコーラスを助けようとしますが、シモーヌに見破られてしまいます。シモーヌは、家から農夫を追い出し、家にカギをかけて外出。
悲しみに暮れるリーズ・・そこへ、農夫に紛れて家に忍び込んだコーラスが現れました。
しかし、シモーヌが帰宅。リーズは慌てて、コーラスを自分の部屋へ隠します。勘の鋭いシモーヌは、娘の様子が怪しく思い、部屋に押し込めカギをかけてしまいます。
そこへ、結婚公証人を引き連れて現れたトーマスとアラン親子。リーズのいない場で、アランとリーズの結婚が成立してしまいました。
新妻リーズを迎えるため、アランがリーズの部屋へ・・
しかし、リーズの部屋を開けると、リーズとコーラスが抱き合いキスをしているではありませんか。
リーズとコーラスはシモーヌに結婚を許してほしいと乞います。
その様子を見ていた公証人もアランとリーズの結婚は無効であり、リーズとコーラスの結婚を許すようにシモーヌを諭しました。
結局、折れるしかなかったシモーヌ。二人の結婚を許しました。
リーズとコーラスは、農夫たちからの祝福されめでたく結婚となりました。
見どころ
とにかくオシポワとマックレーが少女と青年に見える見事な演技!脇役も演技派&個性派ぞろいで見応えは十分すぎるほど。
ラ・フィーユ・マル・ガルデの有名なシーン
リーズとコーラス あやとりのパ・ド・ドゥ
リボンは、この作品のモチーフ。
リーズとコーラスがリボンを使って遊び戯れるパドドゥは、貴族の恋ではなく、ふつうの人の恋を描いた振り付け。素朴ながら、ときどきコミカルで、飾らない感情が伝わってきます。
見どころのひとつは、踊りながらリボンで見事なあやとりを完成させるところ。きれいな模様がでてくるので、ぜひ注目してほしいです。
- ナチュラルなオシポワ&マックレーの表情が楽しい
- リボン使いがパーフェクト
リーズとコーラス リボンのパ・ド・ドゥ
アダージオ、リーズのソロ、アダージオ、コーラスのソロ、コーダと盛りだくさんです。
リーズのバリエーションは、大小ジャンプが多く含まれ、回転も複雑な振り付け。
なんと言っても見逃せないのが、リーズが友人8人がもつリボンだけを支えにしてアティチュードターンをするシーン。普通なら何かしらの男性によるサポートがありますが、そこがリボンなんです。
コーダの細かくて軽やかなポワントワークも美しく、回らないし跳ばないのに拍手しちゃいたいぐらいです。最後の難しいリフトも注目。
- 助走なしの片足ジャンプが多いのですが、そこはオシポワ!軽&高
- マックレーの180度開脚マネージュが!
- 高速ポワントワークも浮いてるんじゃない?ぐらいの軽やかさ
シモーヌの木靴の踊り
男性が演じるシモーヌ(リーズの母)による木靴の踊り。
ちょっとタップダンス風なんですよね^^ コミカルでとにかく楽しいです。
一緒に踊る4人の女性の踊りもすごくかわいい♡
コールドバレエ メイポール
メイポールとは、イギリスの伝統的な五月祭りで踊られるダンス。木の柱のてっぺんに何本ものリボンがついていて、それを持ち、柱を中心に回りながら踊ります。
ダンサーがステップを踏みながら、楽しく踊りながら、リボンがどんどん編まれていくが見どころです。
有名じゃないけど注目したいシーン
リーズ・コーラス・アランのパ・ド・トロワ
ピックニックのシーンででてきます。
三角関係って重そうだけど、ラ・フィユ・マル・ガルデのパ・ド・トロワは、コミカルで楽しい♪
アランの謎の動きは思わず笑っちゃいますよ。
最後は、リーズとコーラスがそっと逃げちゃうのでかわいそうなのですが^^;
リーズとシモーヌ 糸紡ぎとタンバリン
第二幕の始めにでてくる、リーズとシモーヌのシーン。
シモーヌのタンバリンに合わせてリーズが踊ります。踊りで派手さはないのですが、とにかく二人の掛け合いがおもしろい!
ハエを捕まえた?フリをするリーズをぜひ見てほしい 笑
バルコニーならぬ小窓のパ・ド・ドゥ
第二幕、コーラスがリーズの家の小窓から現れます。
家の中には入らずに、小窓から上半身だけ乗り出しての二人のパ・ド・ドゥ。
そんな状態でのパンシェやアティチュードターンは、この作品ならではかも。ラブラブなリフトもありますよ♡
木の棒をもった村人の踊り
男性コールドが木の棒を小道具として、軽快に踊るシーン。
木の棒ってこんな風に使えるのか!って驚きましたが、男性のジャンプ力が素晴らしい。派手な振付じゃないんですけどね。
私が結婚したら・・(リーズの妄想)
シモーヌにコーラスとの結婚を反対され、意図しないことに悲しむリーズのひとり芝居シーン。
踊るところはほぼありませんが、リーズの心情がダイレクトに伝わってきます。オシポワの演技力もさることながら、アシュトンってすごいなと思わせられました。
結婚式の踊りからのエンディング
クラシックバレエの結婚式のシーンといえば、高貴な雰囲気を醸し出すものが多いですが、ここはラ・フィユ・マル・ガルデ。
「ふつうの女の子の夢が叶った」を温かな雰囲気のアダージオで表現しています。”ふつう”を描くのって難しいと思うんですが、やっぱりアシュトンは天才だなと・・
アダージオが終わると、村人の踊りかエンディングへ向かうのですが、ここが個人的に大好きなシーン。村人が踊る円の中から、シモーヌ、コーラス、リーズが次々とリフトされて祝福。
自然と観客からも拍手が起こるシーンなんです。幸福感溢れるエンディングは何度でも見たい。
アラン
この作品でアランは、少し頭が弱い男性として表現されています。
今でいうところの、発達障害なのでしょうか。
アランは、リーズとすごく結婚したかったわけではなく、心配した父親の配慮で結婚が進みます。
個人的な感想ですが、障がいがあることを特別扱いせずに描いているのかなと思いました。そして、なんと言ってもこの作品の影のキーパーソンです。
アランの独特な踊りはコミカルながらも難しいだろうなぁと思うものばかり。アランの動きも要チェックです!
細かすぎる?感想
- オシポワもマックレーも細い!(今はがっちり)
- リーズの最初の衣装、ノースリーブなんです。村娘タイプの衣装でノースリーブって珍しい。下から履いているかぼちゃパンツも可愛い♡(かぼちゃじゃないですけどね)
- オシポワのポワントが紙コップみたいです。よく立てるな・・
- 最初の鶏たちに現プリンシパルのフランチェスカ・ヘイワードがいるんです。どれかわかんないけど・・
- 鶏の履いているシューズ、爪がついているのです
- マックレーの程よい柔軟性が好きです。硬すぎず、柔らかすぎず、伸びやか。
- シモーヌ役のフィリップ・モーズリー、大好き!面白い役出来る人いると舞台に深み出る。オシポワとの親子絡み、ずっと見てられますw
- 農夫の衣装が幼稚園の制服みたいに見えちゃうのだけど、日本だけなのかも。
- 麦わら帽子を背負っても美しい。さすがバレエダンサーたちです。
- アランの防止に刺さっている花がなんともいえず、かわいいのです。
- ポニーが途中で何か食べた!チーズ?
- 最初の印象が強い鶏たちですが、舞台のあちこちに登場してコケティッシュな踊りを披露。何度も見られるDVDだからこそ発見。
- エンディング、ダンサー歌ってた!?